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転換期迎えた台湾液晶パネル業界
収益低下で新世代工場建設意欲にかげり



1990年代半ばから、常に台湾電子関係産業の「花形」とされてきた液晶パネル。相次ぐ巨額の新規生産投資は、台湾の経済成長のリード役まで果たしてきた。だがさすがに、その勢いにも衰えが見えはじめた。いま各社は市場動向を見守りつつ、事業戦略の再検討に入っている。
液晶パネルの大ブーム

 テレビやパソコン・モニターの脱ブラウン管が世界の大潮流となった90年半ば、台湾の事業家は一斉に液晶(LCD)分野に進出を謳い、日本をはじめ海外の技術を取り込んで大型パネルの生産に名乗りをあげた。
 電機・電子・情報産業からの進出はもちろん他産業からの参入計画も相次ぎ打ち出され、連日のように新聞紙面を賑わした。最盛期には10件近い新規参入計画が並ぶという、まさにLCDパネル・ブーム。オプト・エレクトロニクス産業イコールLCDの感さえ抱かせるものだった。
 だが、この事業はパネルの大型化と量産化がコスト面の競争力確保に不可欠で、それに対応しようと思えば、サイズにもよるが1件当たり最低200億元もの大型の設備投資が必要になる。資金力の問題から企業数はおのずと絞られ、結果として現在は「面板5大手」と呼ばれる5社による生産・供給体制に収まっている。
 友達、奇美、中華映管、廣輝、彩晶の各社がそれである。だが、事業の開始から約5年、生産拡大に向けてまっしぐらに突き進んできた各社に、経営面で大きな変化が生じた。

過当競争と大型化路線

 変化がはっきりと現れたのは昨年だ。各社の利益が次第に低下傾向を示し、生産体制の強化・拡充に問題が生まれた。その根底となったのは、このビジネスにおける世界的な過当競争と、とどまるところを知らない大型化志向である。
 このうち、過当競争は以前から懸念されてきた。各社が一斉に操業を始めたときから、メーカーの乱立が早晩業界再編成につながる−との声が出ていたのは事実である。
 競争から来る製品価格の低下は、徐々にではあるが各社の経営を圧迫していった。加えて、世界のマーケットでは日本や韓国の大手企業と熾烈な戦いを強いられ、出荷量自体も頭打ちが始まった。
 価格競争に打ち勝つにはコストダウンが何より求められるが、液晶パネルの場合その唯一最大のポイントは、パネル基板の大型化に集約される。パネルの基板はそのサイズによって「第〇世代」と呼ばれる。いまから見れば計器、電卓、さらに携帯電話などに使われる超小型・小型の第1世代、第2世代、さらに第3世代までは期間的にそこそこ続いた。
 しかし、台湾企業が参入した第4世代からはパソコン用やテレビ用が主体となり、急激に世代の転換が進んだ。現在は大型フラット・ディスプレイ・テレビの需要急増などに対応し第6世代が主力だが、近く第7世代を迎えようとしている。この流れに沿って、台湾各社も第7世代、7.5世代を目指して計画を具体化させていた。

サイズ競争に敗れれば‥

 第6世代の場合の基板サイズは1.5mx1.8m。材料工学あるいは加工技術から大型化はこのあたりが限界という見方もあるが、世界の有力メーカーのサイズへの挑戦はさらに加速し、すでに日本のシャープや韓国・サムソンなどは第7世代(1.87mx2.2m)、第8世代(2.2mx2.6m)さえも見据えている。
 ところが台湾メーカーの売上げ・利益は、このところ大幅に減少し、友達は昨年第3四半期の売上げが約390億元。第2四半期に比べて20%、金額では100億元も落ち込んだ。当然、第3四半期の利益も、前期比30%ダウンの40億元にとどまった。
 奇美も同様の状況にある。第3四半期売上げは約280億元で前期比20%減少、利益も30億元と第2四半期の実に3分の1にまで縮小している。台湾各社が業績再拡大を図るにはパネル基板の大型化を進め、コストダウンと大型パネル市場への対応が必須要件となる。サイズ競争での敗退は、そのまま企業の淘汰につながりかねない。
 だが、経営の悪化は企業にとって「背に腹は換えられぬ」状況を作り出す。昨年10月以降、台湾大手各社は相次いで7世代、7.5世代生産ライン建設計画の延期を打ち出した。

7.5世代の建設計画が相次ぎ延期に

 その口火を切ったのは、友達と奇美の両社である。これら世代の工場建設には約1000億元の資金が必要とされる。両社は投資の見送りは資金の問題ではなく業界景況の問題というが、サイズ競争に負けないことが生き残りの条件と知りながら、それを当面見送るのは苦渋に満ちた選択といわざるを得ない。
 中華映管もこれに続いた。約1000億元を投じて計画していた7.5世代新工場の建設を、当分延期することを決めた。40インチ以上の大型平面テレビの今後の市場動向に不透明な部分がある現在、リスクは犯したくないというのが、その理由とされている。
 先記の日本と韓国勢が、シャープの亀山第2工場新設計画に代表されるように7.5世代、あるいは第8世代工場の建設を具体化させつつあるなかで、台湾企業が極めて厳しい状況にさらされるのは避けられない。
 もう一つの問題は、この業界が大型投資の実行者として台湾経済の発展に果たしてきた役割を演じられなくなる現実だ。
 投資拡大、とくに民間投資の拡大はいまの台湾政府の経済発展政策の柱だが、友達、奇美、中華映管3社だけでも3000億元に達する今回の投資の延期または中止が、台湾経済全体に少なからぬ影響を与えるのは避けられないだろう。
(Text:富岡克彦)

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